火葬場の係員が言った。
「そろそろ用意ができましたのでご遺族は骨あげにお出でてください。」
がらがらといやな音で引き出された白骨を係員はこれは腕です、これは足ですと説明しながら長い箸を渡してくれた。 まだ頭蓋骨は残っていると係員がコーンと叩くと簡単に崩れ、天辺のお皿は骨壷の上に載せて下さいと事務的に言っ た。
南無阿弥陀仏。
その夜、見知らぬ小さな駅で電車に乗った。
乗客はみな無表情で僕を避けるように固まっていた、おどおどしながら長い間、電車に乗っていると大きい駅に着いた。
ここから帰るのだがどの電車に乗ればよいのかわからない。
駅員に聞いて電車はわかったが線路を横切るらしい、どうしてもなかなか往きつかない、やっとの思いで辿り着くと電車は目の前で発車してしまった。
これが最終であとはバスだけがあるという。
ぱらぱらと降る雨の中、薄暗い民家の軒先でバスを待っていると
横に香川さんが立っている。
「あんた死んだんじゃないの」と言うと
「そうや死んだがこうして時々出てくるのや」
と済ました顔で言った。
おかしいなあと思った途端、ぱっと眼が覚めた。
周囲には西尾、柏、高畑など懐かしい山登りの仲間がニコニコと座っているではないか。
「さあ、山へ行こう」とすっかり準備が出来ている。
待てよ、みんな死んだ仲間ではないか、そこでふっと気付いた。
そうだ、俺は死んでいたのだ。