天人五衰酔うて生きるも楽しいな
冒険ダン吉で少年に戻りたし
醒めた酔い耳の底には天城越え
柔らかな陽射しに坐る寺の縁
まどろめばトランペットは天空の音楽
シャガールが好きな淑女は奔放なのか
童顔のまま老いて行く日本人遥かな旅
サーカスの親方の横顔が冷たいぞルオー
一番星見つけた夕方の焚き火
山は雪だなシャンソンを聴きながら
重圧のあった時代のネクタイさ
魚焼いた夕餉こころに平和あり
老教師朧月夜を抱いたまま
もう過去に戻れぬ夢か獅子頭
一律に島を照らして島の灯台
シャガールのカップルが浮く春の天
老いの肌乳白色の湯が包み
夫婦鹿とことこ歩む薩摩の湯
方言が渦巻きボクは異邦人
ゆっくりと時が流れる硫黄泉
春のダイヤ改正は遊んでおいで
ポシェツトの小銭で駅の喫茶室
ディーゼルの旅はひとりの文庫本
旅帰りポケット瓶に飲み残し
酔い痴れて春が鍵穴から零れる
山鳩が鳴く遠ざかる人の背に
仏の花替えてるジャズが聴こえるな
同類と見たか蜥蜴が動いてる
生きてるか死んでいるのか周りは青葉
足の向くまま生き物の謳歌聴く
この先に何があるのか名簿消す
躍動感持病なんかはくそ食らえ
裸婦像のエネルギー良し汗ぬぐう
没世間雨の紫陽花も良いな
同い年イロハの音符うろ覚え
小食に慣れて生きますもう少し
赤シャツでピンポン六十既に越し
青葉、青葉、青葉、野猿が僕を見る
天気晴朗カラフル過ぎる保育園
梅雨明けに豆のてんぷらでビール
ガラス戸に朝日が射してくる至福
過去の罪鏤めながら赤ワイン
魔の踊る時間に肉も焼けてきて
無花果は熟し女は逞しく
暗闇の邪鬼の囁きを聴いた
風が冷たくなってこころが死にそうな
夏の汚れを洗えばこの先が寒い
ヒマラヤの凄い月夜よもう一度