七十へ未来志向をせよと鷹
小吉が続く暮らしのミニトマト
ゆっくりと蜘蛛の動きを見る平和
私の過去パソコンに閉じ込める
表紙絵の駱駝の鈴が鳴らす過去
ひらひらと二月の蝶が網膜に
背が寒い妻が凍っている路地に
旅愁とは朝の園児の遠い声
雪は降りますか私を埋めるまで
金色の海に重なる亡父の背
その果ては楽土か旅のアルミ缶
眠ったか君も戦士の貌をして
雪降らぬ街に雪積み軌道音
詩集など捨てチャンバラが好きになる
嬌声は雑木林のヤッケの黄
家鴨は池におんなは家に恙無し
天女飛翔ロイヤルサルーとすでに空
止まり木に老いの悲哀を見てますか
明け方の悪夢は捨てたはずの過去
ティーカップ夢の破片が浮き沈み
キャラメルの甘さが老いを眠らせる
B 29を見上げてる原風景
潜り戸の向こうに霞む花浄土
眼を閉じる懐かしい顔笑い声
道標の通り歩いた意気地なし
東風吹かば隣りから来る花吹雪
アンド一円慌てて一円玉捜す
跳ね飛ばす布団で判る春の天
街に若さ溢れてひとり仏花購う
小皺にも負けぬ挑戦的ピンク
裏切った愛を日記に書きますか
魔の時も無心に落ちる砂時計
むかし藤村に憧れしセピア彩
蛞蝓は昼寝キャベツを棲み家とし
遠き山恋し壊れた膝を抱き
焼酎を一口飲めば勇気百倍
止まり木に僕の正札ぶら下げる
辿り着くところ見えない蛍闇
水道はぽつりぽつりと神不在
投げやりなママ独り身をすぐに誇示
草の匂いに蘇る少年期
棄てられる人形になる膝注射
平和な顔して遊んでる演歌
焼酎のコップ透かして遠い日よ
千灯供養今年の夏もお別れか
ブリキの兵隊ぞろぞろと我が不眠
酔眼に白衣観音出御する
イチ抜けて浪人らしく爪を切る