作品集   2004年

 

七十へ未来志向をせよと鷹

 

小吉が続く暮らしのミニトマト

 

ゆっくりと蜘蛛の動きを見る平和

 

私の過去パソコンに閉じ込める

 

表紙絵の駱駝の鈴が鳴らす過去

 

ひらひらと二月の蝶が網膜に

 

背が寒い妻が凍っている路地に

 

旅愁とは朝の園児の遠い声

 

雪は降りますか私を埋めるまで

 

金色の海に重なる亡父の背

 

その果ては楽土か旅のアルミ缶

 

眠ったか君も戦士の貌をして

 

雪降らぬ街に雪積み軌道音

 

詩集など捨てチャンバラが好きになる

 

嬌声は雑木林のヤッケの黄

 

家鴨は池におんなは家に恙無し

 

天女飛翔ロイヤルサルーとすでに空

 

止まり木に老いの悲哀を見てますか

 

明け方の悪夢は捨てたはずの過去

 

ティーカップ夢の破片が浮き沈み

 

キャラメルの甘さが老いを眠らせる

 

B 29を見上げてる原風景

 

潜り戸の向こうに霞む花浄土

 

眼を閉じる懐かしい顔笑い声

 

道標の通り歩いた意気地なし

 

東風吹かば隣りから来る花吹雪

 

アンド一円慌てて一円玉捜す

 

跳ね飛ばす布団で判る春の天

 

街に若さ溢れてひとり仏花購う

 

小皺にも負けぬ挑戦的ピンク

 

裏切った愛を日記に書きますか

 

魔の時も無心に落ちる砂時計

 

むかし藤村に憧れしセピア彩

 

蛞蝓は昼寝キャベツを棲み家とし

 

遠き山恋し壊れた膝を抱き

 

焼酎を一口飲めば勇気百倍

 

止まり木に僕の正札ぶら下げる

 

辿り着くところ見えない蛍闇

 

水道はぽつりぽつりと神不在

 

投げやりなママ独り身をすぐに誇示

 

草の匂いに蘇る少年期

 

棄てられる人形になる膝注射

 

平和な顔して遊んでる演歌

 

焼酎のコップ透かして遠い日よ

 

千灯供養今年の夏もお別れか

 

ブリキの兵隊ぞろぞろと我が不眠

 

酔眼に白衣観音出御する

 

イチ抜けて浪人らしく爪を切る

 

 


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