フェリー巡航今年良いことありそうな
ピノキオを飾る馴染みの喫茶店
故郷に落ち着けそうな鐘の音
酔眼で鍋の煮だった音を聴き
単純に生きる無冠の燗徳利
天女には無縁の老いと成り果てる
春よ来い蟻の行列眺めつつ
裏切りの夜を許したほの明かり
キャベツ畑が占領す夢幻の里
異次元の森に溶けている白馬
眉剃った尼僧が似合う桂川
パソコンのマウス逆らう締切日
四国百山制した足がまた疼き
もてなしの膳へ私の胃が辞退
多眠少食鯛の刺身も欲しいけど
なぜ亡友の笑顔か風の吹く夜に
登山書をめくると雪はさらさらと
思い残し切符に何を書くのだろ
回想の甘い痛みに眼を閉じる
遠くの旧友よジュピターを聴いてるか
雪溶けて君の島にも春が来る
過去に目を向けると挫折など幾多
ほろ酔いへ飛天翔んでる春の天
今年見たしだれ桜に友は亡し
割烹着男はさまにならぬまま
男なるか妖艶な花の下
安眠をすれば極楽の門開く
青葉に囲まれ仏像はにこやかに
おいでおいでと手招きしてる薬師佛
寝転べば蒼天は回転する如く
北国の友は元気か切手貼る
満月の夜は矢傷を確かめる
地図上を電車が走り行く空疎
止まり木の向こうで天女微笑する
亡き人のいのちを消すか住所録
石窟岩 仏の傍で栗鼠遊ぶ
郷愁の思いは安東河回村
カップルへ水原華城ライト照る
支石墓に佇てば俄かにシャワー雨
悔恨は遠い記憶の草いきれ
オールドブラックジョー満月に想う旧友
丸薬が床に転がる手の震え
酔眼に庭の胡瓜はすくすくと
下弦の月二合の美酒に降りてくる
漬物とめしでシンプルに生きる
幼児らが騒げば老いにある落差
花開き花散り痛む脚擦る