元旦の朝阿弥陀佛一列に
声高な仲間へ温い風が吹き
晴れた朝疎遠の友をふと想い
早朝の庭を歩けば蜘蛛の糸
如月の朝には訃報ばかり来る
独居してどぶろく飲むは春の贅
手を繋ぎ損ねる時の四面楚歌
堂暗く薬師如来もまた孤独
膝痛を神与えしか山は過去
風小僧空虚な嘘を通り過ぎ
老木に若葉を見るは生きる糧
野火の向こうに希望はあるか風渡る
薬師寺の鐘を聴きつつ塔仰ぐ
小雪舞う若草山に鹿群れる
法隆寺九面観音愛らしく
奈良町の蕎麦屋で憩う気まま旅
酔眼を微風が撫でる花の下
亡友からの便りと聞いた遠い声
飼われてる不満が咬みつき猿となる
民宿に遠い昭和のはやり歌
夕映えを仰ぐと充足感少し
この街の菓子舗も今は春色に
宿泊の職業欄は斜線引く
未来図をクリックすれば白紙だけ
みどり野の果てに在すか風の神
検索エンジンで幸せは出てくるか
早起きの無職は風に微笑まれ
海も山も時に機嫌の悪い神
初夏の庭サクランボの実へ小鳥来る
カレンダー一枚破るだけの無為
雑音が多い世相へ背を向ける
はらそぎゃあてぃされど荒野に果ては無し
海神の怒り論理の壁崩れ
登山道ひっそり祀る山の神
てふてふの行方を追えば梅雨の空
消灯の闇に幼い日が浮かぶ
向き変えて見れば魔法の笛が見え
無定見河の流れに沿うメダカ
白昼夢は幻蝶のひらひらと
風止んで無縁社会にも酷暑
独り寝のベッドへ吠えるひき蛙
振り向けば亡友は笑顔を見せて去り
立秋の浜は見知らぬ人ばかり
敦賀・小浜紀行
凛として気比神宮の大鳥居
洞穴に八百比丘尼入り給い
奈良へ水送る泉は神宮寺
眼病の効能を聴く多田薬師