立ち姿君には透明感がある
飲み薬ごくりと東には薬師
朝は七時大気を吸えば街の音
鯉跳ねて生きる証しになる波紋
鮭遡上する三面(みおもて)の秋暮色
豪農の館江戸期の色が濃く
両岸にヨットが並ぶ信濃川
刈り終えた田に白鳥は悠然と
着膨れて狸に化けたのか鏡
文庫本暇な時間の拾い読み
冬籠りなら草臥れた服でよし
君も僕も酒量が落ちた冬酒場
不具合は拙者の足に御座候
とぐろ巻くマムシも笑う良い陽気
アンタだれやがては僕も言うだろう
笑うまい鎮座したまま見るテレビ
地獄から膝の痛みの問い合わせ
春山を眺めて擦る膝の骨
石段の下りの膝を笑う鬼
やせ我慢杖のお世話にならぬ膝
薄暗い樹林の中にある楽土
先人の胎内佛にある思い
幻の大河眺めている不眠
天からの光りを受けて秘境駅
赤ワイン無意味な一日が過ぎる
四肢痛む老いを鼓舞する陽の光り
赤い実へ小鳥ら集う朝ぼらけ
もう遠い記憶に友の滑落死
発掘をすれば神代にもある暮らし
雨の予兆か膝痛が攻めてくる
ハラソギャアテイそうだもうすぐ浄土だよ
忘れるというのは神のお導き
浦島太郎は孤立した僕も
使い捨て傘に仏性か走り雨
追い抜かれ老いは階段一つづつ
砂踏めば砂が教える辛い過去
寒月下老いの孤影は許すべし
白菊に遠い記憶の恋ひとつ
華やかな娘らショーウインドに写る
猿も山に戻って街は粉雪に
ご飯粒こぼして留守番は独り
よく笑う人が去ったら陽も落ちて
友よ友よボクを残して帰る空
別れにはたとえお義理の拍手でも