巻頭言9

  「キタキツネのお話」

                                   谷口幹男

 先日、書棚を整理していると1983年に書いた短文が出てきた。内容を読むと現在の僕の思いと少しも変わらないのだ。 川柳界全体も少しも変わっていないことにも気付かされた。ではこの短文を再録してみたい。

「先日、テレビで北海道能取岬のキタキツネの物語が放映された。これは母狐が第一の巣、第二の巣と棲み変えて最後に子供を追い払い子離れする話だが、巣を棲み変えることによって自分の縄張りの端へ子を追いやって子離れを容易にさせる動物の深い摂理を垣間見た思いがした。

親と子も時期が来れば他人になる動物の世界がある一方、

にんげんは子離れの時期を誤って親離れできない子を作ることが往々にある。

川柳の世界でも、いつまでも大会の選に何句抜けたということにこだわらず選者に親離れした自分の句を確立したいものである。」

皆さん如何であろうか。

 


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