現代川柳講座(七)

 

 

川柳のつくり方(三)

前回に引きつづいて添削を行いたいと思います。

  (原句)餅肌と流しあいつつ温泉で

 温泉で女性同志背中を流しあいながら、相手のひとがすべすべした餅肌

の主と感じたという句ですが、一度にあれもこれも云っているので、何かも

たついてすっきりしません。背を流すのは風呂=温泉ときまっていますので

、省けるものを省くと、次の句になります。

  (添削)餅肌はこんなかいなと背を流し

 

  (原句)棟上げに餅投げている紋付が

 この句も交通整理ができていなくておしまいが何ともならなくなってしまって

います。

  (添削)今日は吉日紋付が餅を投げ

 

  (原句)雪だるま転がしながら大きくし

 これでは当たり前のことで句になっていません。下句に「大きくし」といって

説明しているのが欠点で、次のようにするべきです。

  (添削)雪だるま転がしてゆく幼稚園

 

  (原句)乳母車転ばぬ先の杖として

 これも、下五が「杖として」とおさまっていません。表現を考えるべきです。

  (添削)乳母車ゴトゴト転ばぬ先の杖

 

  (原句)箸ぐらい転んで笑えぬ年齢となり

 これではまるっきりの散文で、それも舌たらずです。箸ぐらい転んでも笑え

ぬ年齢となり、というのが正しいでしょうが、これでは句になりません。表現

の仕方に勉強がいります。

  (添削)転ぶのが箸では笑うておれぬ年齢

 

  (原句)餅もんだ娘の口に残る粉

 この句はわかることはわかるのですが、もうすこし突っこんだところでとら

えると面白い句になります。ひとの動作をいれると、次の句になります。

  (添削)洗面所大福餅の粉を拭き

 

  (原句)どうしても餅を食べないのがひとり

 これでは読んだひとに訴えるものが薄く、それがとうしたといわれそうです

。これを違った表現でいうと、次のようになります。

  (添削)お雑煮の餅が苦手で笑われる

 

  (原句)転んでもママは元気に起こさせる

 句の意味はよくわかると思います。しかしこれでは幼稚園の標語のようで

す。この句のママをママと云わないで、ママと感じさせる表現の方法、次の

ように云うと表現できます。この方法を擬人法といいます。

  (添削)転んだ子買物籠が起させる

 

  (原句)雑煮餅喰べるときには歯をはずし

 それはそうでしょうが、何かこれでは印象が悪いと思います。そう露骨に

は云わずに、次のように云うべきです。

  (添削)入歯では具合が悪い雑煮餅

 

  (原句)新世帯餅つく手間も省く今

 いかにも初心者らしい句です。思ったことをそのまま云うといっても、やは

り表現の方法に工夫がいります。それには先輩の句を沢山読み、沢山つく

ることで覚えるのが一番で、同じ材料でも次のように表現すれば句は引き

たってきます。

  (添削)マーケットの餅が雑煮の新世帯

 

  (原句)年齢ですね足元弱くてよく転ぶ

 これも同様で、表現の方法を変えると、次の句になります。

  (添削)足からの老いかこの頃よく転び

 

  (原句)餅つきも杵の音より電気器具

 作者の云わんとするところはわかりますが、表現に工夫がいります。

  (添削)お雑煮も今年は電気餅つき器

 


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