作品集 2006年

菜の花を思うとき夜の安堵

明日もまた未知始まるか霧笛鳴る

神不在なれど両掌を合わせたし

雑犬でよしチワワにはなりたくない

穂高まだ思うこの風の冷たさに

規則正しい時計の音よ今深夜

咳き込めば冬のいで湯を思うのみ

失せ物をまた探させる隠し神

白菜は煮えたぞ雪よもっと降れ

クリックをしても空白だな未来

原稿を飾る言葉に自己嫌悪

友は皆疎遠になった風の木戸

あなた唄いますか仮面をはずせれば

目覚めれば木々の緑の懐かしさ

軌道音ここは他郷の夜のホテル

援軍が来ぬ止まり木のやるせなさ

雪は静か君の笑顔を網膜に

さらさらとさらさらと小雪聴く独居

女生徒らのさえずりが好き冬の旅

空撮の穂高はすでに遠い距離

海暮れる丘には花が一杯に

生々流転ただ砂時計さらさらと

明日はどんな流れになるか野天風呂

手を振って分かれ再び会えぬ人

チューリップ咲き華やかな雨の庭

昼時のうどんに行列する讃岐

薬膳茶の豆を雉鳩がつつき

曇天が続き怠惰な老いの朝

風神に散り時知るか山桜

野も里も若葉まだまだ老いられぬ

点景に農夫見ている独り旅

湖面光るいま観音に憧れて

蝶々と戯れながら夏野菜

暁の鐘聞く微睡のなかに

ビバー!乾杯僕の世界は侵されぬ

肩組んで叫んだ時代嘘ですか

楽しみは朝のビールと豆腐など

鹿島槍追想膝がまた痛み

読書に飽きテレビに飽いて雨しとど

茄子胡瓜採れて焼酎でも飲むか

故郷が光り懐かしい原風景

窓際にピエロ飾って飲むビール

蚊が飛んでいる追いかける不眠症

風に揺れてる野の花も私も

奈落へ傾斜してゆく哀しみの霖雨

砕け散るか傍観するか独りの手酌

悲哀の球転がして果ては南無観世音

春夏秋冬こころ透明にして篭居

 


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