日光にて
六月の中禅寺湖に山桜
曇り空華厳の滝へ向くピント
霧流れ茶ノ木平に躑躅咲く
陽明門修学旅行溢れさせ
火の国
どてら着て淵から覗く阿蘇火口
黄昏て熊本城は逆光す
足元の地獄をまたぐ栗野岳
焼酎を一本買うて鰻の湯
アメリカ紀行
ギター引きが唄いシスコは黄昏る
金髪の美女とワインとナパバレー
ケーブルカーの吊革監獄島を背に
霧多き空港で買うサングラス
ラスベガス一寸スロットマシンなど
花いっぱいデズニーランド雨も良し
三ドルの日経を買う日本街
ホテルからタートルベイの椰子などを
花嫁と行き交うワイルア川の旅
バーテンへカフエーオンリーなどと気障
三重山紀行
石垣港ハイビスカスが風に揺れ
与那国の女が泣いたクブラバリ
聖子と言う水牛で行く由布の島
蛇皮線が鳴る竹富は既に過疎
波照間は南の果ての海光る
山之辺、室生古道紀行
泣き笑い地蔵が立てる春霞
影姫の幻影を見る和邇下社
汗拭けば腰折れ地蔵ひっそりと
天までの石段室生奥の院
大野寺のしだれ桜を見る笑顔
第五回ふあうすと作品
塔仰ぐ柔らかに光る髪よ
その音は風かも知れず死者かも知れず
睡りの色鮮やかに麒麟躇佇つ
病むことに不安がつのる葡萄の絵
爆音が飢えた記憶を過ぎてゆく
ヒマラヤ紀行
カトマンズ猿と仏が同居する
うら若き美女黙然と子供ずれ
スマートな兵士が立てる検問所
霜月にシャブルベンシで見る桜
ヤクが群れ遊びランタン夕陽する
満月の夜にシェルパが打つ太鼓
雪山へランタンの月煌々と
ヒマラヤの峰正面に見てトイレ
トラックの上で陽気な山の民
ヒマラヤよさよなら乾季の雨が降る
ヒマラーヤで
ここはキャンジンゴンバ
冷夏10度のテント場で
満月は煌々と輝き
雪山をライトアップする
シェルパらは太鼓を打ち
踊り騒いで焚き火を廻り
ロキシーにほんのり酔って
平穏無事に一日が終わる
小屋はランプ一つの明かり
かまどは勢いよく燃えて
子供らはすばやく走り回り
外はひゅうひゅう風が鳴る
ポーターらは道ばたで
枯れ枝燃やし稗を炊く
文明に遠いとはいうが
何時も陽気な山の民
11月9日は激しい雨で
不幸に東で雪崩れが出たが
シェルパら唄うトラックの上で
レッサンピリリ レッサンピリリ
花の紀行
室生寺は初夏テッセンが咲き乱れ
石楠花が艶やかに立つ薊岳
平治岳のミヤマキリシマ人多く
皆カメラ大船山のイワカガミ
東北花の旅
毛無岱チングルマの実が風に舞う
雪渓にミチノコザクラ岩木山
下北の縫道石山熊へ鈴
白神岳ルリトラノオが真っ盛り
追悼 柏さん
涙して石一つ積む菩提の山
明け方に墜死の友がありありと
飾ろ飾ろ山嶺の花ガス囲み